年中担任
進級児は、お兄さんお姉さんになった喜びとともに新しいクラスにワクワクし、一方、新入園児は「幼稚園ってどんなところかな、楽しみだな、でもちょっと心配だな…」と、一人一人がそれぞれの思いを抱いて一学期が始まりました。
四月、新入園児のAちゃんはおともだちと遊ぶのを楽しみに登園してくるのですが、慣れないせいかおともだちとのおもちゃの貸し借りが苦手で、「入れて」の声を掛けられないせいもあり、一人遊びになってしまいがちでした。
ある日、園長先生からクラスにそら豆をひとついだだきました。絵本「そらまめくんのベッド」の読み聞かせの後、幼児達の目の前でそら豆の皮を剥きました。
「ふわふわベッドだ」
「本とおなじだね!」
とみんな大喜び。
次の日、絵本に出てくるそらまめくんの人形や家をつくり、いただいたそら豆と一緒に飾っておきました。Aちゃんはそらまめくんに興味津津。そしてそらまめくんを使って遊び始めました。それを見ていた周りの幼児も一緒に遊びたいようで、
「そらまめくん、かわいいね」
「ねえ、貸してくれない?」
「いっしょに遊ぼうよ…」
Aちゃんはいつもの調子でそらまめくんを独占して遊びたかったようでしたが、ままならず、そのうち取り合いが始まりました。Aちゃんには
「みんなのだから、なかよく使おうね」
周りの幼児にも
「みんなでつかおうよって、やさしく教えてあげようね」
と声掛けをしたところ、しばらくして
「貸してあげるよ…」
AちゃんがBちゃんにそっと渡していました。それをきっかけにして、次第にAちゃんと関わる幼児が日毎にどんどん増えていきました。
いまではおともだち遊びにもすっかり慣れ、仲良くいろいろな遊びをしています。そらまめくんは今でもクラスにありますが、ときどきそらまめくんに成りきって、自分で作ったセリフを言っている姿をみていると、微笑ましく思います。
一人の遊びからおともだちとの遊びへと世界が広がるその瞬間に立ち会えたのかなと思うと、保育者になってよかった、と心から思います。これからも、幼児の成長を見守りながら、適切な指導援助を心掛けたいと思います。
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