年中担任
四月。いよいよ新学期のスタート。いつもと変わらず遊びを展開する園児、緊張と不安から思うように友達と関わり合えずにいる園児、・・・様々です。
中でも人一倍人見知りの激しいAちゃんは、おどおどするばかりで私達保育者の目を見て話すことすらできない状態でした。
そんな中、少しでも早く新しい環境に親しめるように、クラスで自己紹介をすることにしました。年中組の年度始めということもあり、内容は簡単に、自分の名前と、「よろしくお願いします」の挨拶、このふたことのみとしました。割と順調に進んでいき、いよいよAちゃんの番。でも・・・やはり立ち尽くしたままで何もことばを発することができませんでした。「今の段階ではまだ無理かな、もうすこし様子をみないと、・・・」と内心思っていたその時、後方に座っていた女児二人が突然Aちゃんの隣までやってきました。
「大丈夫?」
「いっしょに言ってあげようか?」
そんなやさしい言葉を何度もくりかえしかけながら、彼女たちはAちゃんをずっと励ましつづけました。ほかの園児もみんなじっと見守り、応援していると、・・・・・・
うつむいていたままだったAちゃんがほんとうに小さな小さな声でしたが、自分の名前を言い始めました。
「やった~!!」
クラス中、大きな拍手で大喜び。それが自信になったのか、今ではクラスに響き渡るほど大きな声で挨拶して登園してきますし、新しい友達にも積極的に関わりを求めるようになりました。以前の姿が嘘のようです。
たったひとこと、小さなひとことが、人に考えられないほどのパワーを与える。そんなパワーを与えてくれる友達がたくさんいる。そしてこのようなことが日常的に行われている・・・。思い出すたび、「このクラスの子どもたちは幸せだなあ」、と感じるエピソードのひとつです。
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