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21世紀の子ども達へ |
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~ある日の絵本の読み聞かせから~ 年長担任
鵜ノ木幼稚園では伝統的に、お帰りの前のひととき、絵本の読み聞かせが盛んに行われています。「学年それぞれの水準に合ったものを、雰囲気を大切にしながら読み、子ども達は熱心に聞く」という光景がよく見られます。小さいうちはどうしても集中しにくいものですが、いろいろな本に触れ、面白さが分かってくるようになると、本当に関心してしまうくらい上手に集中できるようになります。 * * * 夏期保育中の8月のある日、「はだしのゲン」という一冊の絵本を使って子ども達に戦争のこと、原爆のことについて話しました。 皆さんもよくご存知かと思いますが、『平和に暮らしていた一家が被爆し、襲いかかる様々な試練を乗り越えてたくましく生きていく様子』がリアルに描かれている絵本です。年長の子ども達にとってはかなりむずかしい内容ですし、大人が見てもちょっと目をふさぎたくなるような場面もありますが、あえて戦争のこわさ、昔あった事実を伝えるために読み、そのあと長い時間をとって話し合いました。 始めは「何の話だろう」と聞いていた子ども達も、次第に話の中に引き込まれ、目を覆うこともなく最後まで身じろぎひとつせずに聞き入っていました。絵を見たときは「こわい」「気持ち悪い」「夢に出てきそう」などの声も聞こえてきましたが、原爆にあたると一瞬のうちに体が焼け落ちてしまうことが一番理解しにくかったようです。その後子ども達のいろいろな意見、感想を聞くことができました。その中でも、私は、一人の子どもから「もう戦争にならない?」と何度も尋ねられたのが印象的でした。 子ども達に聞くと、家庭で戦争について話を聞いたことのない子どもがたくさんいました。残酷だから、知らない方がいいから、と伝えなくていいのでしょうか。私は、子どもでもその内容をある程度理解する力があると思いますし、また戦争を知らない私達でも次の世代に事実を伝えて行くのは義務だと思います。
これからも場面場面で保育者が話題の提供者となり、子ども達にいろいろ伝えていきたいし、これがきっかけで各家庭で子どもと話す機会がどんどん増えていくといいなと思います。そしてまた、21世紀にはばたく子ども達が、幼稚園と家庭とが連携しながら豊かな感性を育んでいかれるように、これからも指導援助して行きたいと思います。 |
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