学校法人 雀村学園 鵜ノ木幼稚園

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よい指導援助とは

年長担任

 

 私は子どもの気持ちをくみとって、いろいろな豊かな経験をさせることを大切にしています。特に年長組の子ども達は体も心も動きがダイナミックですから、本当に瞬時に判断して正しい指導や援助をしなければいけないことも多く、一日の終わりにその日を思い返して反省することもたくさんあります。その中で私にとって印象深いエピソードをご紹介します。

 ある朝のこと、部屋に一匹のテントウムシが入ってきました。それを見つけた数人の男の子が捕まえようとしたのですが届かず、私に頼んできたので、捕まえたところ、その一匹をめぐり取り合いになりました。偶然その朝にお菓子のケースを持ってきていたA君が「これに入れれば逃げないよ」と説得し、テントウムシを貰えることになりました。

 そこへ数分後、B君が家で捕まえたトカゲを持って登園してきました。さっそくみんなで観察していると、「トカゲは何を食べるのかな?」という疑問が誰からともなく湧き、B君は「生きている虫を食べるんだよ。」と話しました。それを聞いていたA君は「このテントウムシ、食べるかな。」とつぶやきました。

 たった一匹のテントウムシを自分が独占でき、それまではまるで宝物に大切にしていたはずなのに、それを餌にしてみようという発想に私はびっくりして、その瞬間「えっ?」と声をあげてしまいました。A君は私の顔を見て「ダメだよね・・・」と苦笑いを浮かべました。その発想は立ち消えになってしまいました。

 あのとき、そのまま見守っていたら、と今でも思います。子ども達に「トカゲがテントウムシを食べるかどうか」を確かめさせることができたし、弱肉強食、「生き物が他の生き物を食べるという自然の摂理」まで展開できたのではないか・・・そのチャンスを奪ってしまったような気がしたのです。

 でも、そのテントウムシは、A君が大切に箱に入れてクラスに置いておいたのでみんなが観察できたし、次の日A君はそっと逃がしてやったようです。私の思いとは別の方向の展開になりましたが、それはそれで良かったのかな、とも思います。

 私はこのエピソードで、保育者の何気ない言動が子ども達に大きな影響を及ぼすことを、改めて身に染みて感じさせられました。これからは私自身、このような経験をどんどん積んで、さらに子ども達のために適切な指導援助が瞬時にもできる保育者を目指したいです。

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